12月。師走を目前にした寒い時期でも釣り人は嬉々として釣りへ出掛けます。
なぜかって?
そう、まだまだ魚が釣れるからです!水は熱しにくく冷めにくいにもの。だから意外とまだ海の中は温かく秋の余韻を残している。だから魚もまだ活性が高い。
しかし水温がある水準まで下がりきってしまうと釣れ難くなるのは事実。特に回遊魚の釣りに対してはネガティブな影響を与えます。この時期、夏から秋はサビキでいくらでも釣れた小魚は日ごとに魚影が薄くなってきてるはず。それを追ってきているタチウオも同様。
タチウオってわりと寒い時期まで釣れるけど何か目安ってあるんだろうか?いつまで釣れるか推測できるんだろうか?水温の降下とタチウオの釣果の関連について調べてみました。
シーズンによって終了時期に差がある
タチウオは冬でも岸から釣れる
タチウオは秋の魚だけど
堤防などの岸からタチウオを狙う場合、どの季節の魚という印象があるでしょうか?多くの人は秋、地域によってはそれより早い夏を含むかもしれません。
大阪湾を例にすると、夏ぐらいから小さなベルトサイズのタチウオが釣れはじめ、秋が深まるにつれて本番を迎え、年内には去っていく。そんなイメージです。実際、11月半ばにはほとんど姿を消す年もありました。
年をまたいで釣れることもある
一方で2015年など、年によっては1月の後半までタチウオが釣れ続けた息の長いシーズンもありました。それまで秋で終わる魚だと思っていたので驚いたものです。タチウオは冬でも釣れるのかと。
でも年によってその時期にバラつきがあるのはなぜだろう?
終了時期は水温に影響される
水温が高いと長く釣れ続く
どうやらタチウオ釣りの終了時期は水温に影響されるらしい。水温が高いと終了時期が後ろにずれ込んで長く釣れ続けるようです。
なるほど、年をまたいで釣れた2015年のシーズンは年明けの1月まで暖かい日が多かった。その影響で高い水温が維持された結果、タチウオが1月後半まで釣れ続いたわけです。
釣果情報と水温情報を照らし合わせてみよう
釣れなくなった日と水温をピックアップ
じゃあその基準値ってあるんだろうか?具体的に水温が何度まで下がると終了になるんだろう?釣果情報と神戸周辺の水温情報を照らし合わせてこれを考えてみます。
釣果情報は大阪湾でお馴染みフィッシングマックスの釣果情報を参考にしましょう。
その是非や釣れ具合の表現には皆さんそれぞれ思うところはあるでしょうけど、念入りに釣果を拾ってくれるおかげで「釣れ始めの時期」と「完全終了の時期」に関しては信頼度が高いといえます。ここの釣果情報から一番遅い時期までタチウオが釣れる南芦屋浜の釣果を調べ、そこからタチウオが消えた日をピックアップします。
水温については海上保安庁が発表している神戸港水温情報をもとにします。メリケンパーク付近にある桟橋の表面水温なので、そことは距離が離れた南芦屋浜では多少の差異があると思いますが、神戸付近のリアルタイムな水温情報を得られるのはここしかないので。
釣果情報から終了時期をピックアップする
フィッシングマックスの釣果情報で南芦屋浜の釣果情報から、タチウオの釣果情報が最後に掲載された日付をシーズンごとにピックアップした結果がこちらです。
シーズン別タチウオの最終釣果
2013年元旦からの釣果情報が残っているようなので2012年のシーズンからピックアップ開始。”タチウオの気配あり”とかいう眉唾情報は除き、写真付きで確実な釣果が残っているものだけ拾いました。
シーズンによってプラスマイナス1ヵ月ぐらいの差がある。まずはそれが分かるデータです。
各シーズンの12月から1月の水温をグラフにする
続いて水温です。
水温の低下にばらつきがある
神戸港水温情報ではエクセルデータを配布しているので(2016年時点。現在は配布無し)、それをもとにグラフにしたものがこちらになります。
どの年も2月の厳冬期に向けて10度前後の水温に収束していきますが、年によって年末年始付近はかなりバラつきがありますね。その差3~4度ぐらい。たかが3度されど3度です。
魚にとって数度の差は大きい
人間でも42度のお風呂と45度のお風呂じゃ全然体感が違うじゃないですか?42度は熱いけど慣れれば普通に入れるレベル、45度じゃちょっとした我慢大会レベル。
ましてや変温動物である魚にとっては人間とは比べ物にならないほど大きな差のようです。
ざっくり見た限り1月末まで「お前いつまで居んねん!」状態だった2015年(赤い線)は明らかに水温が高い。
対照的に12月半ばには早々に姿を消し「え?アイツもう帰ったん?」状態だった前年の2014年(黄色い線)は見るからに低い。
終了時期と水温を照合してみえてきた「13度」の壁
以上2つのデータを照合して、各シーズンでタチウオの消息が最後に確認された日に★印を置いてみました。
水温11~12度ぐらいで姿を消す
だいたい11度から12度付近に分布しています。
神戸付近における海水温の底は10度前後なので、意外なほど低い水温でも釣れるようです。冬の釣り物に入れてもいいぐらいに。
海水温とタチウオ釣果の関連性
水温13度がひとつの目安
多少ばらつきはありますが、ここぐらいまでなら釣れるという最低水温の目安が見えてきました。
水温とタチウオ終了時期の目安
もちろん自然が相手なのであくまで目安。水温も実際に釣場で計らないと必ずしも正確といえません。
水温以外にもタチウオのエサとなる小魚、つまりベイトの回遊具合やその他の環境要因もあるので断定できるわけではありませんが、私の見解でまとめるとこうなります。
- 水温が13度以上あれば十分に釣れる可能性がある
- 水温が13度未満になるとかなり厳しいが釣れないこともない
- 水温が11度以下になったら完全終了
こんなところです。
水温13度が限界値になる
大阪湾奥のタチウオ釣りにおいては「水温13度」というのが釣れる可能性があるかどうか判断できるひとつの境目といえるかもしれません。
通常は年内終了だが暖冬傾向だと1月中まで釣れる
水温が13度以上を保っていれば釣れ続ける
よっぽど早い時期から寒くならない限り例年は12月中旬まで釣れる。その後は水温が13度以上を保っている期間が長ければ長いほどそれだけ遅い期間まで釣れ続ける。ここでもう一度グラフを見てみましょう。
2015年のタチウオシーズンが1月下旬まで続いたのは異例だったけど、水温だけをみれば当然のことだったと理解できます。他の年のグラフと明らかに違うカーブを描いていることからその水温の高さは一目瞭然。
完全に釣れなくなるわけでもない
実際11度以下になっても完全に姿を消すわけではなく何かの偶然で釣れることはあるようです。冬場のアジング、メバリングの仕掛けに食ってきたという話も聞きます。
さらに付け加えると海水温13度ぐらいまで「釣れる可能性がある」のは確かですが、ピーク時と同じというわけにはいきません。冷え込んでくるとアタリも減りますし、アタリ自体明確ではなくなってくる。そしてそのアタリをフッキングに持ち込める確率も下がります。寒くなるにつれて難易度はどんどんあがる。
一発大物が狙える時期ではあるので、それを期待するのもありですが。
急激な水温の下降もマイナス要因
水温の急降下で一時的に釣れにくくなる
水温がタチウオの釣果に与える影響。13度という閾値の他にもうひとつの要因があります。それは水温の急降下。
シーズン真っ只中に関わらず、急激に水温が下がることがあれば一時的に釣れなくなるタイミングがみられます。タチウオに限らずどの魚でもその傾向はあるのですが。強い寒波が入って水温が急激に下がれば13度以上であっても一時的に食いが悪くなり、しばらくして水温が安定するとまた活発になり釣れるようになる。
海水をかき混ぜる効果のある台風の襲来も水温を下げる要因になりますが、まだ20度前後など水温が高い時期に接近した場合は逆に釣果が上がることもあります。俗に台風後の荒食いと呼ばれる現象です。
寒波の到来は終わりの合図
12月にもなると「この冬一番の寒波」というフレーズをニュースで聞くようになります。この寒波到来もタチウオ終了の目安。
もう一度さきほどのグラフを見てください。
グラフ中にある青い★。2016年の1月13日です。
この年はこの日を最後にタチウオの釣果が消えました。この翌日14日から関西で大雪を降らせた寒波が到来して一気に水温が下がったことが原因と思われます。グラフ上でも水温が急降下していますね。
その前の年の2015年シーズンも、沖縄に雪を降らせるほどの強烈な寒波とともにタチウオの釣果が消えました。それが赤い★。
寒波の到来というのも、タチウオ終了を判断するひとつのキーといえそうです。