波止からエサでタチウオを釣るならキビナゴが定番。
釣具屋の冷凍エサコーナーで販売され、数百円で20匹ぐらい入っています。水分を抜き身を固くする加工がされているものが使いやすく、多少遠投するなどしても針から外れにくく長持ちします。
身を硬くするこの加工、ご家庭でもかんたんに再現が可能です。
塩を使って水分を抜くだけで釣果アップ!
たった3ステップのかんたん加工
浸透圧を利用して身の水分を抜く
キビナゴの加工自体はかんたんな3工程のみ。
塩を振りかけてキビナゴの身から水分を抜くだけです。塩を振りかけたキビナゴの身から水分だけが外部へ移動する浸透圧を利用します。
この加工方法を「塩締め」と呼び、キビナゴ以外もサンマやサバの切り身で応用が可能です。
キビナゴを塩締めするメリット
エサ持ちアップで釣果もアップ!冷凍保存もできる
キビナゴを塩締めすることでこんなメリットが。
エサ持ちが良くなるということは魚とエサが遭遇できるチャンスが増えるということ。エサ交換の頻度も減るので手返しも良くなります。冷凍できるから、いつでも釣りに行けるしすぐに使える。
塩で水分を抜くだけのかんたんな加工で特別な道具もいらないため、高いコストパフォーマンスで効果的なタチウオ釣りのエサが用意できるのです。
キビナゴの塩締めに必要なアイテム
塩締めに必要なアイテム
特別な道具は必要ない
用意しておきたいアイテムがこちら。
キビナゴを含めて必要なものをリストアップ。
加工するからといって特別な薬品や道具は必要ありません。塩、キッチンペーパー、チラシや新聞紙、そして保存用のタッパ。どこのご家庭にもあるものばかりです。
できるだけ生のキビナゴを素材に
当然ですがキビナゴが必要です。スーパーや魚屋で見つけてきてください。
キビナゴの旬の時期に入荷が多い傾向です。よく見かけるのは5月6月あたりの初夏、そしてタチウオ釣りの最盛期とかぶる9月から11月あたりの秋。
釣りエサとして売っている冷凍キビナゴを解凍したものでも作ることができますが、やはり生のキビナゴを加工するのがベストです。
安い塩
塩に関しては味がいい粗塩や天然塩を使う必要はありません。1キロ100円で売ってるような安い精製塩でOK。むしろそっちのほうがサラサラで使いやすいでしょう。
密閉できる容器
塩締めに使う容器はザルやステンレスのバットでもいいですが、オススメは密閉できるタッパです。
身から出た水分をこぼさず受けることができるし、そのまま蓋をして冷蔵庫に入れれば匂いも漏れないので安心。
水分を吸収するための紙類
新聞紙やチラシなどの紙、そしてキッチンペーパー。
これはスノコの代わりにしたり水分を吸収する素材となります。食べずにエサとして使うので、紙だったらなんでもいいです。捨てる予定のようなもので構いません。
キビナゴの塩締めを作る手順
【手順1】新聞紙やチラシをクシャクシャにして底に敷く
匂いが漏れないタッパが最適
では塩締めを作る手順をひとつずつ見ていきましょう。
容器はタッパがおすすめ。そのままフタをして冷蔵庫で保管できるからです。うっかり汁を漏らすこともありません。塩締めしたキビナゴは匂いがきついのですがそれも漏れません。
丸めた紙で水分を吸収
新聞やチラシなど要らない紙を用意してください。水分を吸いそうな普通の紙ならなんでもいいです。これをおもむろに丸めてクシャクシャにします。
それを軽く広げてタッパの底にふわっと敷きます。タッパの大きさにもよりますが1枚あれば十分。
これはキビナゴから出た水分を吸い取ると同時に底上げすることでキビナゴ自体に水分が戻らないようにする工夫です。吸水剤とスノコの役割を兼ねます。
キッチンペーパーだけでは水分吸収が追いつかないのでこうして底上げしておくとしっかり水分が抜けます。後ほど仕上がったらこの紙は捨てるだけ。
【手順2】キッチンペーパーを敷いて塩を敷きつめる
キッチンペーパーを敷いて平らにする
先ほど底に敷いたくしゃくしゃの紙の上にキッチンペーパーを被せます。
なるべく平らになるように敷くのがベストですが、あんまり気にしなくてもOK。
脱水用の塩を敷き詰める
このキッチンペーパーの上に塩を振ってまんべんなく敷きつめてください。キッチンペーパーを覆う程度、うっすら雪化粧レベルで。
後ほどこの上にキビナゴを置いて更に塩を振りますので、バランスよく水分が抜けるよう裏側にも塩を施しておくという目的です。
【手順3】キビナゴを並べる
塩の上にまっすぐキビナゴを並べる
塩の上にキビナゴを並べていきます。
あんまり細かいことは気にしないでいいです。多少重なってもいい。ぎっしり並べてもいい。
ただしこの時点でキビナゴが曲がったまま塩で締めてしまうと、その形のままキビナゴが固定されてしまいます。曲がったキビナゴをエサに使うと、まっすぐ仕掛けが引けなかったりクルクルと回転したり、仕掛けの遊泳姿勢に支障がでます。釣果に差が出ます。
出来るだけまっすぐ並べましょう。
【手順4】キビナゴの上に塩を振り掛ける
表面に塩を振りかける
キビナゴの上に塩を再度振り掛けます。これもうっすら雪化粧ぐらいでいいですがお好みで。
塩締めの作り方を調べると、そこにキビナゴを埋めるかのごとく大量の塩を使っているのを見ることがあります。しかしキビナゴの水分量はたかがしれてるのでそこまで大量の塩は必要はありません。
塩の量と時間で硬さの調節を
いずれにせよ自由に仕上がりを調整できるのが手作り加工のメリット。ご自分の釣り方に合わせた硬さを見つけてください。塩の量と塩締めにかける時間で調整できます。
実際エサとして使ったとき実感すると思いますが、最初にボロボロになってしまうのは内臓が入ったお腹の部分。締め方がゆるいと、ゾンビのように内臓がデロンと出てきます。ここは重点的に塩を掛けてしっかり水分を抜いておくとエサ持ちがよくなります。
ここまで出来たら完成間近。そのままフタをして冷蔵庫に入れておきましょう。
【手順5】冷蔵庫で一晩ほど放置する
キビナゴから出た水分を捨てる
一晩から1日程度冷蔵庫に入れておくとキビナゴから出た水分がスノコ替わりの紙をビショビショに濡らしているはずです。
タッパに水が溜まっているので水を流しながら排水口に流して捨ててください。魚の臭みが凝縮された汁なので、そのままシンクに付着していると悪臭を放ちます。ステンレスのシンクについた塩粒も錆びの原因になるのでしっかり洗い流してください。
汁で濡れた紙もそのままだと匂うのでビニール袋に密閉して捨てるか、水にさらして魚の汁を絞ってから捨てましょう。
さっと塩を落とす
残った塩粒は水で流しザルなどにあげて水分を落としましょう。
水で流したからと言ってすぐさま身に水分が戻ることはないのでご心配なく。触ったらザラザラするほど塩が残っていると、いざ釣り場で使うときに手に付いて面倒なので落としておいた方が良いです。
【手順6】小分けにして冷凍する
冷凍で長期保存ができる
塩締めしたキビナゴは冷凍で長期保存ができます。
1回の釣行でたっぷり使う、かつ冷凍庫の容量に余裕があるならそのままタッパごと冷凍してもいいかもしれません。
しかし2~3時間のタチウオ釣行で使うキビナゴは多くて20~30匹ぐらいだと思うので、1パック分丸々使うのは多すぎます。また、一度完全解凍した使いかけのキビナゴをもう1回冷凍するのはできるだけ避けたいところ。
ジップバッグに小分けして保存するのがおすすめ
そこでおすすめなのは10匹ぐらいずつ小分けにして冷凍する方法です。
Sサイズのジッパー付きビニールに小分けするのがおすすめ。ここ10年ぐらいでIKEAやニトリなどで人気商品になりましたが、もちろん100均でも買えます。解凍するときに多少水分が出るので、それを吸い取るためにキッチンペーパーを同封しておくと役立ちます。
しっかり空気を抜けばそれほどかさばらないし保存もきくので、多めに作ってストックしておくといいでしょう。
どれぐらい冷凍保存できるのか?
1年程度は問題なし
冷凍保存できる期間は冷凍庫の性能や使用状況にも左右されますが、1年程度なら全く問題ありません。
解凍と冷凍の繰り返しは避けたい
ただし余ったキビナゴなどで解凍と冷凍を繰り返していると、だんだん身が白くなって水分も無くなっていきます。白色はやがて黄色がかって身もボロボロに。それでも釣れる可能性はありますが、早めに使い切るにこしたことはありません。
タチウオのエサとしてキビナゴを選択するメリット
ウキ釣りと引き釣りで共通して使えるから
引き釣りならドジョウが一番
タチウオのエサといえばドジョウが一番。関西ならそう思われる方が多いかもしれません。
それは正解です。引き釣りならドジョウが最高。
1匹100円程度しますが、エサ持ちがいいから1匹で何本もタチウオが釣れる。エサを付けかえなくていいから手返しもいい。結果的にコストパフォーマンスが高く釣果に繋がるエサといえます。
キビナゴならウキ釣りと引き釣り共通で使える
それでもキビナゴを選択するメリットは、引き釣りとウキ釣りで共通して使えるエサだからです。
夕方前から日没まで引き釣りやルアーでタチウオを釣ったら、その後はウキ釣りに移行する人は多いはず。それならキビナゴだけでまかなえます。
タチウオ以外の魚も狙えるから
タチウオと同時にガシラやアナゴも狙える
タチウオや青物を狙う際は沖のほうばかり狙いがちです。
しかしちょっと視点を変えて足元、岸壁ギリギリも狙ってみてください。丸オモリとチヌ針だけの簡単なズボ釣り仕掛けにキビナゴをつけて。誘いもいりません。仕掛けを投入して着底させたら放置しておくだけ。
タチウオの時合い前後、空が赤くなるぐらいからガシラ(カサゴ)やアナゴが釣れ始めます。しかもエサが大きいので小さいサイズが掛かりにくく大きなサイズが釣れやすい。
タチウオ狙いの時期だから岸壁付近にキビナゴが撒かれ、ガシラなどの魚が集まるという説があります。眉唾情報にも感じますが、この時期に岸壁付近で釣れる魚がキビナゴに好反応を示すのは経験上確かなこと。
大きなサイズの魚が釣れやすい
小さいキビナゴなら丸々一匹、大きいキビナゴなら半分ぐらいに切って針に付ける。それを海底付近に落として待つだけ。それだけでかんたんにガシラやアナゴが釣れます。キビナゴをエサにするなら20センチ前後がガシラのレギュラーサイズ、季節が進めば30センチ近い大物が釣れることもあります。
全く同じ釣り方、同じポイント、同じエサでアナゴが爆釣する日もあります。アナゴなんて素人はさばけないと思いがちですが、簡単にさばく方法があります。
意外なところで秋の時期はキビレなんかもキビナゴで釣れます。仕掛けや狙い方はガシラと同じです。
そもそも生のキビナゴって売ってる?
売ってるときは売ってるけど入荷は不安定
取り扱いは少ないけど売っている
キビナゴが魚売り場で売られているところを見たことがない。そんな人も多いでしょう。確かに取り扱いは少ないですが、あなたの町でも見かけることはあるはずです。
相場としてはだいたい30~40匹入りのパックが100~300円というところ。傷みやすい魚なので、遅い時間に行けば半額になってたりもします。こんな風に。
見つけたらまとめ買いしよう
でも魚売場に行けば必ず売られているアジやサバと比較すればメタルスライムのごとくレアなやつ。少なくとも私の行動圏内である大阪北部の各スーパーでは数日おき、しかもランダムな入荷状況。あったらラッキーでまとめ買い。
少なくとも関西地方では一年中安定して手に入るものではありません。冒頭にも書きましたがキビナゴの旬である5月から6月ぐらいと、9月から11月ぐらいに入荷することが多いようです。
9月から11月って、まるで釣り人のために入荷してくれてるかのような絶妙なタイミング。
自作エサで魚を釣る達成感
釣りエサは釣具屋やエサ屋で買うものですが、魚は釣り場周辺で生きている水産物を当たり前に食べているわけです。
一方それらは普通の顔をして魚売場に並んでおり、そのまま、あるいは多少加工すれば釣りエサとして使えたりします。
タチウオ釣りのエサはその際たるもので、キビナゴはもちろん、どこでも売っているであろうサバやサンマの切り身をエサにできます。なんならキビナゴとサイズが同じぐらいのワカサギだって使えますし、シシャモやメザシをテンヤに付けて投げても釣れたという話を聞いたことがあります。
とりわけ自分でひと手間かけて工夫や加工をしたエサで魚が釣れるというのは達成感が得られる体験だと思います。自分で考案した仕掛けで魚が釣れたりとか、魚の行動パターンを想像してそれに応じた狙い方をしたら釣れた時とかと同じように。
めんどくさいし時間が無いって場合はもちろん釣具屋やエサ屋で買えばいいですが、自家製のエサで魚を釣ってみるのはいかがでしょうか?それで釣り上げた魚は今までと違って見えるはず。