時間帯という側面でタチウオほど明確に時合いがあるターゲットは他にあまりいないんじゃないかと思います。必ずしも予定通りというわけにはいかないものの、ほとんどの場合は日の入りに始まって日の出に終わる。そして昼はほぼ釣れない。実に分かりやすい。メリハリがきいてる。
夕まずめ狙いで混雑するタチウオシーズンの釣り場は、釣り人がスタートラインに並び1本目のタチウオが釣れるという号砲を待ち構えているような雰囲気があります。1本目が釣れた光景を見るや否やヨーイドン!釣り場があわただしい雰囲気に。
その1本目を釣り上げる人になってみるのはどう?というお話しでございます。
「ヒーローになりたい」
夕まずめはギャラリー多め
関西におけるタチウオシーズンのファミリー向け釣り場は例外なく混雑します。特に夕まずめ狙いの夕方。
有料の釣り公園は別として、アクセスが良く設備が整っているそういう場所は、釣り場としてだけではなくデートスポットや近隣住民の散歩エリアとしても機能し、ゆえにギャラリーも多い。タチウオの時合いはロマンチックな夕日を眺められる時間帯と重なるのでなおさらですね。
朝まずめも混雑しますが、夕まずめと比べればほぼ純粋な釣り人オンリーなので、みんな静かに探り合いをしているような夕方とはまた違った独特の雰囲気があります。この雰囲気は嫌いじゃないぜ。
つかの間スポットライト
そんなギャラリーの多い中、その日その場所1本目をタチウオを釣り上げるというのは、なかなか気持ちのいいものであります。注目を浴び一瞬だけその場のヒーローに。
釣り慣れている人にとっては当たり前の光景なんだけど、生きたタチウオは鋭い刃物のようにギラギラと光を反射してとても美しい。なめらかに動く背びれにも見入ってしまう。初めて見る人は結構インパクトがある光景だと思います。「すごーい!」という黄色い声も聞こえたり。ギャラリーが多い釣り場ならではですね。
「あれうちの父ちゃんですねん!」という感じで子供も誇らしげ。親としての株も上がるっちゅうもんです。え?私だけ?器が小さい?ええねんええねん。こんなときしかヒーローになられへんねん…
早く釣るといっても昼間は難しい
日没1時間前ぐらいからが目安
いくら早く釣りたいからといって「よーしパパ昼間っからタチウオ釣っちゃうぞー!」と真昼間に竿を出しても基本的には釣れません。稀にはぐれタチウオみたいなのが居て、昼間っからルアーでヒットすることもありますがこれはあくまでレアケース。いろいろな条件と運を持ち合わせていないと釣れないです。
陸から確実に太刀魚が釣れ始めるのは”日没の1時間前ぐらいから”というのがひとつの目安になります。薄暗い曇りの日ならさらに早くなる傾向。沖提ならそれをさらに前倒しした時間帯に。
沖から岸へ 深場から浅場へ
波止では昼間は釣れず夕方から釣れ出す。これは昼の時間帯は沖の深場に居るタチウオが、暗くなるにしたがってエサを追い岸に近い浅場に浮き上がってくるという習性と合致しています。船からだと真昼間にタチウオ釣ってますもんね。
日没1時間前は沖の深場からタチウオが陸に近づきつつある時間帯。
狙うべきポイントと釣り方
なるべく遠く なるべく深い層
ということで、その日の日没1時間前ぐらいから”なるべく沖で底のほう”を狙えばタチウオが釣れる可能性が高くなるわけです。さてどうやって狙おうか。
まだ明るい時間帯に一本目が上がったのを契機として、周囲の釣り人が一斉に浮き釣り仕掛けを投げ込み始めるという光景を目にすることがあります。
でもちょっと待ってください!
その第一釣人は浮き釣りでタチウオを釣り上げましたか?たぶん違うはず。
遠投して底層を狙うにはルアーかテンヤが不可欠
浮き釣りで沖の底層を狙うのが不可能とは言いませんが、ちょっと無理がありますし効率も悪いです。
なので遠投ができて底層が狙えるタチウオ仕掛けとなれば、必然的にルアーかテンヤになります。それ自体の重量があるので遠投ができるし、底層だろうが表層だろうが狙えるタナは自由自在。
明るい時間にテンヤの引き釣りで狙う方法
残念ながら私はルアーでの釣りに造詣が深くないので、テンヤでの引き釣りを前提として話を進めます。底をとるまではルアーもテンヤも同じだと思うので、だいたいこんな流れで狙うという参考にしてもらえれば。
沖を狙えばいいってもんじゃないですが、明るい時間に一本目を釣るまではどこまでタチウオが接岸してきているか分からないので力いっぱい可能な限り遠投をして長い距離、広い範囲を探りましょう。テンヤとタチウオが出会う確率が上がります。
やってみたら釣れたのは20m沖ぐらいの近場でしたってこともありますので、そしたら近投に切り替えればOK。
そして底から丁寧に探る
引き釣り用テンヤ5号ぐらいの重さで神戸近辺の岸壁からであれば、着水後10~20秒のカウントで海底に仕掛けが到達するはず。風や潮の流れが強くなければ竿先の感覚や糸フケで底についたのが分かると思います。着水後にリールのベールを戻したりラインを指で押さえたりしてラインのテンションをかける、いわゆるテンションフォールをすれば底についた感覚が分かりやすいです。
初めての釣り場では必ず底に着くまでの秒数をカウントして水深のイメージを頭に入れておきましょう。例えば底まで10秒かかった場所でテンヤを引く層を浅くしたければ、次は9秒、次は8秒という風に1秒づつ秒数を減らしてから引き始めればOKです。
このカウント、頭の中でカウントをするのが普通なんでしょうが、私は自分自身の感覚を信用していないので腕時計の秒針を見ながらカウントしてます。
根掛かりに注意
そこからリールを巻いてテンヤを引いてくるわけですが、底についたままズルズルと引いてくると海底の障害物に引っ掛かってテンヤを失う可能性があるので、軽く竿をしゃくってからテンヤを一旦底から浮かせたうえで引き始めましょう。
普通のテンヤならまだしも、タチウオゲッターだと高いしね…。そもそも可能な限り海底にゴミを残すべきではないという思いもあります。
反応がなければ徐々に浅い層に
反応がなければ徐々にカウントを早めて底から離れた層を引いてみる。
アタリはガツンと根掛かりのように明確な感触がある場合が多いので初めてでも分かると思います。違和感を感じたらとりあえず竿を立ててアワセてみるのがいいかと。底付近を引いているため、本当に根掛かりでぬか喜び(&大恥)することもありますが…
最後まであきらめない
どんどん引いてくると当然ながらテンヤが岸に寄ってきます。テンヤの重みと糸の角度から察するにあと5メートルもないな~という位置までくると、もう釣れないだろうと諦めがち。気持ちは次のキャストへ。
が!しかし!そろそろ諦めて仕掛けを回収しようかと気を抜いたころにアタリが!というのを私は何度も体験してきました。もう気が抜けて集中力を欠いている状態なので、十中八九アワセが間に合いません。
沖からずっと追ってきていたのか、たまたま岸近くに居たのか分かりません。ただ、タチウオはエサとなる小魚を岸に追い詰めて逃げ場を無くしてから捕食するという話を聞いたことがあります。となるとこれはまさしくその瞬間なのかも。
なので足元の水面からテンヤを引き上げるまでは気を抜かず、岸近くは丁寧にゆっくり、そして集中して引き続けてください。沖を引いているときよりむしろチャンスタイムかもしれません。
とまあ、実際は他にも誘いを入れてみるとか色々とやることはありますが、おおよそこんな感じです。
ルアーロッドを持っていないけど引き釣りをしたい
釣りをはじめたばかりでエサ釣り派の方。自分はルアーロッドを持ってないから浮き釣りのみ、テンヤの引き釣りができないと思っていませんか?大丈夫。
例えば釣具屋の店頭にある安いサビキセットみたいなやつ、おそらく竿は磯竿の3号3~4m前後だと思いますが、とりあえずそれでも引き釣りはできます。短めのライトな投げ竿でもできる。万能ロッドみたいなやつでもちょい投げできるレベルのものならなんとか。
リールに巻いてあるラインがPEじゃなくてナイロンだとしてもOK。食い込みがいいからナイロンのほうがいいという人もいます。やっていくうちに自分なりの不満点や要改善点が出てくると思うので、それから新しい道具を検討しても遅くないです。
実際私も2,000円ぐらいで買った磯竿3号3.6m、ナイロン3号のラインで引き釣りをやってきました。竿が長い分、その辺のルアーマンより遠投できたりしてある意味では爽快でした。ただ竿が長い分重さもあり腕が疲れる、取り回しがしんどいという不満点もありますので、今年はこの竿で引き釣りをする予定です。
「でもヒーローになりたい」
別に一本目を釣ったからといって何があるってわけでもないです。そのあと釣れ続けるかどうかは関係ないし。でも単純に気分がいいのは確か。今日はタチウオの群が回ってくるんだろうかという、小さな懸念も払拭できる。
それに誰かが釣れるまで何もせず待ってるってのもツマランですしね。というわけで、夕まずめ時のタチウオ釣行は毎回一番を目指したいと思います!勝負だワインダー!(エサ釣り派のためルアーマンに敵意むき出しで威嚇)
いや実際敵意なんてないっす…それぞれの楽しみ方で雰囲気良くやりましょう。