ハクキンカイロの燃料はベンジン。揮発性の高さと同時に可燃性も高いためガソリンと同レベルの危険物です。そしてカイロを温めるときは火口と呼ばれるパーツを直接火で炙ることになります。
燃えやすい燃料に火をつけて使う?それって危険なのでは?
大丈夫。正しく使えば問題ありません。ハクキンカイロが安全な理由を解説します。
正しく使えばハクキンカイロは安全
ハクキンカイロと使い捨てカイロの比較
使い捨てカイロに比べて危険ということはない
ベンジンというガソリンに近い性質の燃料を燃焼させて暖めるハクキンカイロ。使用開始時には本体の一部を火で炙る必要があります。
ガソリンみたいな燃料を火で炙る?やけどしない?燃料が漏れて火事にならないの?爆発しない?酸欠にならない?中毒にならない?
よく分からないけど使い捨てカイロと比べたら危なそうでなんとなく怖いイメージが捨てきれません。私も実際に使い始める前はそうだったから分かります。
でも使い捨てカイロに比べて特別に危険だということはありません。正しく使うことが前提なら心配する必要はないのです。
温かさと持続時間は使い捨てカイロと段違い
それでもなんか怖いから使い捨てカイロでいいと判断するのは間違っていません。
でもこれだけは知っておいてください。ハクキンカイロの温かさは使い捨てカイロとは段違いの温かさだということを。めっちゃ熱いという謳い文句の使い捨てカイロよりも確実に温かく、しかもそれが最大24時間持続します(出典:ハクキンカイロについて|ぬくもりを届けつづけて100周年|ハクキンカイロ株式会社)。
ハクキンカイロに興味はあるけどちょっと怖い。この記事はあなたの不安を取り除きます。
ハクキンカイロは超ロングセラー商品だから
危険な暖房器具は淘汰されて消える
覚えていますか?ハロゲンヒーターを
もしかしたら記憶にあるかもしれません。かつて2000年代前半に室内の手軽な暖房器具として大流行した扇風機型のハロゲンヒーターのことを。
今や市場からすっかり姿を消し店頭でみかけることはありません。
なぜなら熱源であるハロゲンランプが発煙や破裂するなどの危険性が指摘されたから。実際多くの製品がリコール対象となっています。
そう、危険なものはすべからく淘汰されて市場から消える運命にあります。
100年の歴史が証明する安全性
ハクキンカイロは大正生まれ
ハクキンカイロの発売は1923年。なんと生まれは大正時代です。(出典:ハクキンカイロ 会社概要|ぬくもりを届けつづけて100周年|ハクキンカイロ株式会社)
鬼滅の刃の登場人物がハクキンカイロを持っていても時代考証としてはおかしくないわけです。鬼殺隊の装備品にあってもいいわけです。
スーパーロングセラーアイテムだから信頼できる
ハクキンカイロは発売から100年を超える超スーパーロングセラーアイテム。多少のモデルチェンジはあれど、発熱の仕組み自体はずっとそのままです。
ネガティブな要素が広まれば過剰に恐れて不買状態になる昨今、もし危険なものであれば長い歴史のどこかで姿を消しているはずです。調べる限りハクキンカイロによる大きな事故というのも見つかりませんし、私自身しばらく使ってきて危険だと思ったことはありません。
液体の燃料が直接燃えているわけではない
揮発性と可燃性が高いベンジン
ガソリンに近い燃料
ハクキンカイロの燃料はベンジン。ハクキンカイロ指定と銘打たれたベンジンが2種ほど販売されており、公式にもこれらを燃料に選ぶことが推奨されています。
ベンジンは石油から精製される揮発性の高い可燃性の液体で、身近な燃料だとガソリンに近い燃料です。つまりかんたんに引火する物質。
そんな危険なものをハクキンカイロのタンクに注入してから火口を火で炙って暖かくする…えっ?なにそれめっちゃ怖い。肌に近づけて大丈夫なの?
発熱のメカニズムを知ればその不安は解消されます。
ハクキンカイロの発熱メカニズム
液体に直接火が付くわけではない
ハクキンカイロが暖かくなるメカニズムとして一般的なのが以下のフレーズ。
プラチナ(白金)の触媒作用を利用して気化したベンジンをゆっくりと酸化発熱させる
なるほどそういう仕組みだったのか!とすぐ理解できる人は少ないですよね。触媒作用だの酸化発熱だの。
まず事実として知るべきは、液体のベンジンに直接火がつくわけではないということ。
気化したベンジンが化学反応を起こす
ハクキンカイロはベンジンが気体となって火口のプラチナと接触し、そこで化学反応を起こして発熱する仕組みです。
火で炙るのはその化学反応をスタートさせるためのきっかけに過ぎません。炎で暖をとるわけではないのです。
ベンジンを入れ過ぎない限り液体のベンジンに直接火が付くようなことはないので、本体を逆さにしても問題なく使えます。
ハクキンカイロは燃焼している
じゃあ燃焼していないかというと、これはしっかり燃焼しています。
ハクキンカイロの説明書でも「燃焼」という言葉が使われていますし、暗いところで見るとプラチナ製の火口がBBQの炭のようになっている様子が確認できます。
「化学反応で発熱する」という表現でぼやかされがちですが燃焼だって化学反応です。ハクキンカイロの燃焼は触媒燃焼という燃焼の一形態に分類されます。
燃焼温度は最大で350℃程度
この燃焼状態の火口は130℃~350℃程度。
だいたいBBQの炭の半分ぐらいのおだやかな燃焼といえます。火傷だ!爆発だ!火事だ!と過剰に恐れる必要はありません。
とはいえティッシュペーパーぐらいなら発火する可能性がなくもない温度なので、それは頭の片隅に入れておいた方がいいでしょう。もちろんガスやアルコールなどの可燃物も厳禁です。
350℃程度になるのはあくまで製品の一部品である火口であり、そこから真鍮製のボディを通して全体に熱が伝導していくことでハクキンカイロ全体が温まる仕組みです。さらに付属のフリース製ポーチなどで包むことによりまろやかな温かさとなります。
安全に使うために注意すべきこと
決められた使い方はしっかり守る
正しく使うことが前提
燃料を使うカイロといえど、使い捨てカイロに比べて特に危ないものではないことが分かってもらえたと思います。
でもこれは正しい使い方を守ることが前提。
ベンジンの取り扱いに注意する
ベンジンは危険物
まず肝に銘じておきたいことがひとつ。
それはベンジン自体が危険等級IIで取り扱いに注意が必要な燃料であること。火がつけば容易に燃え広がりますし、万が一肺に入れば出血性肺炎を起こします。仮に飲んだらただじゃすまないでしょう。必ず子どもの手には届かない所へ。
危険物ゆえベンジンが入ったハクキンカイロを航空機に持ち込むことはできません。また、既定量を超えてベンジンを注入すれば液体の状態で漏れて危険です。
ストーブだって同じようなもの
でもこれは燃料を使って暖をとる石油ストーブやガスストーブだって同じ。
灯油もガスも想定外の使い方をすれば危険。守っていれば安全で快適。ベンジンが危険だからと言ってハクキンカイロも同列に考える理由にはなりません。
正しく使うこと。これはどんな暖房アイテムにもいえる当たり前のことです。ガスファンヒーターだって「換気しないと死ぬ」的なことが製品にはっきり書いてありますから。
ベンジンの持ち歩きはしないほうがいい
基本的にベンジンの容器は持ち歩くことを前提にしない方がいいと思います。
電車内での放火事件が増えてる昨今、あらぬ疑いを掛けられても面倒ですし。漏れやすいので蓋をしっかり締めないとこぼれたりもします。その時必要な量をカイロに充填して、ベンジンは家に置いておくのがベスト。
24時間も発熱が持続するのだから、外出先でつぎ足す必要はほとんどないはずです。
低温やけどに注意する
使い捨てカイロでも起こり得るやけど
もう一点注意したいのが低温やけど。
これは安全に思われている使い捨てカイロだろうが起こり得ることです。体の一箇所の部位を長時間圧迫して温め続けると血流が阻害され、皮膚の温度が上昇して低温やけどになる可能性があります。
低温だから軽いやけどになるわけではない
「低温やけど」という語感からたいしたやけどにはならないイメージがあるかもしれませんが、場合によっては直接火を触って火傷するより深刻な火傷になることがあります。
長時間じわじわと熱せされることで皮膚の深層までやけどを負った状態になり、一生跡が残るような深度の深いやけどになることがあるのです。
私は子どものころに湯たんぽで脛に低温やけどを負いましたが、その500円玉サイズのやけど跡は40歳を超えた今でもはっきりと残っています。おそらく死ぬまで消えることはありません。
その部分だけビニールのような薄い皮膚になっていて脛毛も生えてきませんし、蚊に刺されてたりするとなかなか治りません。触っても皮膚感覚、触覚がほとんどありません。
公式の注意書きは必ず守る
湯たんぽがわりに使ってはいけない
脅かすつもりはありませんが、低温やけどを侮ってはいけない。ハクキンカイロに限らずどんな暖房アイテムでも注意書きに書いてあることはしっかり守りましょう。
ハクキンカイロのレビューを見ていると寝袋に入れたとか湯たんぽ代わりにしているとかいうレビューが散見されますが、私は絶対におすすめしません。
寝てるときや飲酒時に使ってはいけない
原則として自分の意思で動けない寝ているときや泥酔してるときに使ってはいけません。製品付属の説明書にもちゃんとそう書いてあります。しっかり覚醒しているときだけ使うべき。
安全といえば安全、しかし使い方を誤れば危険、でもそれはどんな暖房アイテムでも同じで当たり前のこと。これが分かってもらえたらなんの不安もなくハクキンカイロが使えるはずです。