根魚と呼ばれる魚の中で最も釣り人になじみ深いのがカサゴ。関西でいうガシラ。
一年中どこでも手軽に釣れるありふれた魚ですが、上質で締まった白身は高級魚にひけをとりません。刺身、煮つけ、から揚げ、色々な食べ方ができる超優秀な食材。
このカサゴを美味しく食べるために効果的な締め方が「活け締め」です。
釣ったカサゴを活け締めにして持ち帰る
釣ったその場で行う締めの処理
処理はたった3ステップ
カサゴを美味しく食べるためには、釣った直後に一連の処理を行うのが理想です。処理工程はたったの3ステップ。
これがいわゆる「活け締め」の処理手順です。
他の魚でも使われる一般的な魚の処理方法で、魚屋で売られている魚もこの処理方法が使われていることがあります。積極的に締めの処理を行わない野締めの魚より高値で売られています。
そう聞くとプロの技っぽくて難しそうな気がしますが、慣れれば問題なし。そして生きた魚が手に入る釣り人だからこそできる処理なのです。これをすることでより美味しくカサゴを持ち帰ることが出来ます。
血抜きすることで上質な白身に
しっかり締めて血抜きをすることで、カサゴの身は見た目にも美しい白身になります。
白身の魚は熟成させることで旨味が増えていきますが、刺身で安全に美味しく食べるために血抜きが効果的です。せっかく上質な白身を持った魚なので、それを生かす活け締めにチャレンジしましょう。
手軽に締めたいなら氷締めにしよう
釣った魚の処理方法として最も手軽なのが氷締め。
氷のように冷たい海水に釣れた魚を放り込むだけの締め方で、サビキで釣れるような小魚に最適です。小型のカサゴ、煮付けや唐揚げで食べるのならこれで十分かもしれません。
しかし身を寝かせて刺身で食べたい場合は、氷締めより少しだけ手間を掛けて活け締めを行うのがおすすめです。
カサゴを活け締めするために必要な道具
釣り場に持ち込んでおきたいアイテム
カサゴを活け締めにするため、釣り場に以下の道具を持ち込む必要があります。
当たり前に持ち込むものばかりですし、かさばるものでもないので、これらは釣りに常時携帯しても邪魔にならないはず。私自身は必ず持っていきます。
釣りを始める前に潮氷を作っておこう
血抜きが終わったカサゴは鮮度保持のためすぐに冷却する必要があります。
この冷却に最適なのが潮氷(しおごおり)。海水を保冷剤でキンキンに冷やしたものです。塩分による凝固点降下で理論上はマイナス2度付近まで凍らずに水温が下がり、魚の体温を一気に下げるために効果的です。また、海水中で保存することにより、浸透圧の関係で魚の身が水っぽくなるのを防ぐことが出来ます。
特別なアイテムやテクニックは必要なく、クーラーボックスと保冷剤、そこに水くみバケツなどで汲んだ海水を注ぐだけ。
カサゴを活け締めする手順を解説
カサゴを活け締めする手順を解説します。処理はこの3ステップ。
脳締め
暑い時期は迅速に処理しよう
実際にカサゴを使って活け締めをする手順をみていきましょう。
釣れた直後に一連の処理をするのが理想ですが、カサゴは運動量が少なく生命力も強い魚。しばらくバケツなどで活かし数匹まとめて処理しても問題ありません。ただし炎天下でバケツの水温がお湯のように上がる時期は鮮度が落ちるのでさっさと処理してしまいましょう。
魚をしっかり固定する
トゲによる不意の怪我を避けるため、釣れたカサゴはフィッシュグリップで掴んでしっかり固定します。
ここでは第一精工のガーグリップを使用して口を掴んでいます。
トング型のフィッシュグリップに比べ先が細いため、魚体を挟むのはもちろん口を掴んだりエラを掴んだりと、フィッシュグリップの中で最も万能に使うことができます。
脳の位置を確認する
ピックの先端で脳を突くわけですが、そもそも魚の脳はどこにあるのか?
そのヒントになるのは魚の表皮にある2本の線。体の側面にある側線とエラ蓋にある線です。基本的にどの魚でもこの2本の線が交差する付近、目の後ろ辺りが脳の位置です。人間でいうこめかみの位置。
脳をピックで突く
だいたいのアタリをつけたらそこをピックで突きましょう。側線のやや下あたりを狙うのがポイント。
頭の骨を貫通する必要があるので少し硬いですし残酷な行為なので躊躇するかもしれません。しかし魚を美味しく食べるために必要なことです。せっかくいただく命なのだからご覚悟を。
ここではアイスピックを使いましたが、釣り具メーカーから締め専用のピックが発売されています。
脳締めができたか確認する
脳締めが成功すると魚が様々な反応を返します。
まず体全体が小刻みに痙攣したのち脱力し、眼球が真ん中の位置まで動く様子を確認できます。同時に背ビレが立ち上がり、口がゆっくりと開いていきます。
しっかり締められたら体色が白っぽく変化するのも確認できるはず。上記の写真は全く同一個体のBEFORE/AFTERなので、模様を見比べてみてください。
カサゴは脳締めに対する反応が分かりやすい魚です。これらの反応が得られずカサゴがバタバタ動いてる場合は脳締めができていない証拠。
体のサイズに対して魚の脳はとても小さいため失敗もあります。その場合はピックの先端で頭の中をかき混ぜるイメージで脳を探しましょう。残酷に思えますが必要な作業です。
脳締めをする目的
脳締めをする目的は3つ。
まずはなにより美味しく食べられるようにすること。なるべく早く絶命させることで、魚の持つATPというエネルギー源を温存できます。ATPは魚の死後にイノシン酸という旨味のもとに変わるため、なるべくATPを残すことが美味しさにつながります。
2つ目は暴れて体をぶつけることによる身のダメージを減らすこと。内出血や身割れを防止できます。
3つ目は不測の怪我を避けること。動きを止めることでトゲが手に刺さるのを防止できます。
血抜き
エラを切って放血させる
脳締めが成功してもしばらく魚は生きて心臓を動かし続けます。
心臓は血を押し出すポンプの役割を果たすため、このタイミングを逃さずに素早く血抜きを行いましょう。血抜きの方法で最も手軽なのはエラを切る処理です。
内側から2番目のエラを切れば効率よく血が抜けるなど方法論はありますが、どこでもいいのでエラを切って出血させるという目的を果たすことができればまずはOKです。効率は慣れてから追及すればいい。
締め用のナイフが釣り具メーカーから発売されています。
しかしナイフを持ち歩くにはいろいろ面倒事が起こり得る世の中。これはキッチンバサミで代用できます。刃を分解できるものがおすすめ。
海水中で振り洗いをして放血させる
血は思いのほか早くゼリー状に固まって切り口を塞いでしまうため、海水に漬けてさらに放血を促します。
エラを開くようにつかんで海水中で振り洗いすれば放血が促進されます。ここでもフィッシュグリップが有用です。
血の気が多い青物と比べてカサゴなどの根魚は血の量が少ない傾向。そのため血抜きができているかイマイチ実感できませんが、海水が薄っすらと赤みがかるのが確認できるはずです。
気温が高い時期の振り洗いは10~20秒もやれば十分。ここで100%抜ききる必要はありません。生ぬるい海水に漬けたまま放置するのは鮮度を落とすだけなのでやめましょう。
冷やしこみ
潮氷で急速冷却する
ある程度血抜きができた魚はすぐさま潮氷が入ったクーラーボックスに入れて冷却します。
カサゴの体液に比べ海水の塩分濃度が高いため、浸透圧の関係で体液が脱水される方向に向かい、ここでも血が抜けていきます。上に掲載したクーラーボックス内の水が血で赤味がかっているのが分かるはず。
当サイトでは釣り初心者用として、釣り具メーカー製15リットルのクーラーボックスをおすすめしています。
潮氷の中で保管する
潮氷は短期的な魚の保存液としても機能するため、そのまま魚を漬けておけば鮮度を維持することができます。漬けたまま魚を持ち帰っても問題ありません。
とはいえ先ほど書いたように浸透圧の関係で脱水が進みますので、できるだけ持ち帰ったその日に下処理までは済ませておいたほうがいいでしょう。
丁寧に締めて最高の白身を味わおう
カサゴの魅力はなんといってもその上質な白身。
これを堪能するためには活け締め処理が不可欠です。多少の手間はかかりますが、数日間寝かせた刺身を味わえばその手間をかける価値を感じるはず。
血抜きを行うことでカサゴの肝も綺麗な状態で取り出すことが出来ます。それを醤油と和えて肝醤油にすることであなたの勝利はより確実なものとなります。皮も美味しい魚なので、霜造りで食べるのがおすすめ。