管理釣り場に放流されているニジマスは20センチ台が主流ですが、50センチ近い大物も混ぜて放流されていことがあります。細いラインで大物を釣るスリルと釣り上げた達成感はたまりません。
この大型ニジマス、養殖魚であれば寄生虫の心配もほとんどなく安全に生で食べることが可能です。せっかく釣れた大物、刺身で食べてみませんか?
ニジマスを生で食べても大丈夫なのか?
養殖魚なら問題ない
養殖ニジマスの刺身は安全で美味しい
そもそも淡水魚であるニジマスを生で食べても大丈夫なのか?
結論から書くと養殖魚であればほぼ問題ありません。捕食している餌の違いが主な要因です。
そしてニジマスの刺身は美味しいのかというと間違いなく美味しい。それもそのはず、回転寿司で慣れ親しんでいるサーモンそのもの。サーモンが嫌いな人はそうそういないはず。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
大型ニジマスが釣れたら刺身にしよう
養殖ニジマスは小さなサイズでも生で食べることは可能ですが、大型のほうが歩留まりがいい、つまり1匹からたくさんの刺身が取れます。
大型になるほど脂がのっている可能性も高くなります。やはり大型魚を刺身にするのがおすすめ。
ニジマスの刺身を作るときのポイント
特殊な小骨の処理が必要
サケやマス類に特徴的な上神経骨
青物など海の魚を扱い慣れている人なら3枚おろしまでは難なくできますが、一点だけ注意してほしいのが上神経骨という独特な小骨の存在。後ほど詳しく説明します。
アジやタイなど海の魚をさばき慣れている人ほど陥りやすい箇所です。
真水に漬けたまま長時間保存しない
海の魚と同様に水っぽくなるリスクがある
海の魚をクーラーボックスで保存する際は冷やした海水に漬けるのが常識。浸透圧の関係で真水に漬けると魚の身が水分を吸収して水っぽくなるからです。
これには魚の体液の塩分濃度が関係していますが、実は淡水の魚も海の魚も体液の塩分濃度は約0.9%で同じ。淡水魚だからといって真水に漬けたままだと水っぽくなるリスクがあります。
締めたニジマスをしっかり冷やせたら、クーラーボックスの水は抜いてしまった方が無難でしょう。
下処理だけ早めにしよう
鮮度保持のために当日中の処理を
持ち帰ったら内臓を取る下処理だけは早くしておくのがおすすめ。できるだけ当日中に済ませましょう。
現場で処理していない場合、エラと内臓は帰宅したらすぐに取り除いてください。養殖ニジマスは内臓から身に移る寄生虫がいないのでその点は心配いりませんが、内臓がついたままだと鮮度が落ちやすくなります。
では、実際に管理釣り場で釣った40センチ台の大型ニジマスを刺身にすべくさばいていきます。
大型ニジマスのさばき方と刺身の作り方
下処理をしてウロコをおとす
小さなウロコを丁寧におとす
まずは水洗いをして全体の汚れやヌメリを軽く取ってきます。水洗いすると同時に同時にウロコを落としていきましょう。
百均で売ってるウロコ取りでも十分とれます。金タワシを使ってもいいでしょう。
ニジマスのウロコは小さくて柔らかいので、口に入ったとしてもあまり違和感は感じません。だからそんなに一生懸命取る必要はないのですが、身に紛れてしまうと見た目的に良くないのでしっかりウロコを落とすのをおすすめします。ウロコが取れる同時に表面のぬめりや汚れも取れ、臭みとりにもなります。
内臓を除去していない場合は、この段階で済ませておきましょう。
水分を除去する
水分除去は鮮度保持に重要
ウロコが落とせたら、キッチンペーパーなどで表面の水分をしっかり拭き取っていきます。水分が残っていると雑菌が増えやすく鮮度落ちの原因となります。
水分を取り除くことで、ニジマス特有のぬめりもとれます。
表面だけではなく、開いたお腹の中の水分も取り除いておきましょう。惜しまずじゃんじゃんキッチンペーパーを使うべし。
冷蔵庫で1~2日程度寝かせる
釣りたてはプリプリの歯ごたえが楽しめるけど
しっかり水分がとれたら、いよいよ刺身にするためにさばいていく…とみせかけて、冷蔵庫で1日か2日程度寝かせます。
キッチンペーパーなどに包んで、ジップロックかラップでくるんで冷蔵庫へ。なるべく空気を抜いておくといいでしょう。
冷蔵庫のスペースに余裕がないなら、この時点で頭を落としておいても問題ありません。
もちろん釣ったその日に食べたからといって何ら問題はありません。釣れたてを刺し身にするとしっかりと弾力を持ったプリプリの歯ごたえが楽しめます。それはそれで美味しいものです。
じゃあなぜ寝かせるかというと、それによるメリットがあるからです。
ニジマスの身を寝かせるメリット
ニジマスを寝かすことによってこのようなメリットが生まれます。
熟成が進んで旨味が増す
身を寝かせることで熟成が進み、より濃厚な旨味を感じる身になります。
それと引き換えに弾力をもったプリプリの歯ごたえは落ちていくのですが、どっちを取るかはあなた好みで。もともと旨味が強い身なので、釣りたてでもじゅうぶん美味しいです。必ずしも寝かせる必要はありません。
小骨が抜きやすくなる
サケマス類に特有の上神経骨という小骨があり、たとえば青物の小骨とは違った骨の生え方をしています。
これは包丁で一括処理することができない小骨になるため、1本ずつ丁寧に骨抜きで抜いていくしかありません。熟成して身の弾力が落ちることで、この上神経骨が抜きやすくなります。また同じ理由で皮も引きやすくなります。
3枚におろしてさばいていく
頭を落とす
それでは寝かせたニジマスを3枚におろしていきます。
申し訳ないですが、私は左利きゆえ包丁を左持ちしています。以降の写真は左手で左利き用の出刃包丁を持った様子ということでご理解ください。
まずは斜めに刃を入れて頭を切り落としましょう。
3枚におろす
次に3枚におろしていきます。
最初に腹から刃を入れ、刃先に背骨があたるまで丁寧に身をそいでいきます。
少しずつ刃を進めて身をそいでいきましょう。
三枚おろしのセオリー通り、腹背背腹の順番に刃を入れていき三枚におろしていきます。
残った背骨の部分は捨ててもいいですが、スプーンで身をこそげとって中おちとして食べたり、塩を振って焼くなどすれば無駄なく美味しく活用できます。
腹骨をすきとる
次に腹骨をすきとっていきます。
包丁を持っていない手で腹骨を抑えつつ、指の下に刃を潜らせるイメージで切るときれいにすきとれます。
腹骨をすき取り終えました。なお腹骨のお腹側にある白い身の部分はサケでいうところのサケハラスです。焼くと脂がじゅうじゅう出て美味い箇所。
3枚におろしてから身を寝かせてもいい
なおこの記事では頭がついたまま3枚におろす前の状態で魚を寝かせましたが、この段階まで処理を進めてからラップで密閉するなどして寝かせるのもおすすめです。
基本的には食べない頭、それをとっておいた方が冷蔵庫で場所も取らないので省スペース。ただし、以降の過程で紹介する小骨抜きと皮ひきは寝かせてからやったほうが楽です。
小骨(上神経骨)を抜く
ニジマスの小骨は特殊な小骨
3枚におろすまではアジやサバなど一般的な魚と手順は同じ。しかしここからはニジマス特有の処理が必要になります。
腹骨がとれたら身に残ってる骨はもうない…と思いきや、ニジマスには面倒な小骨が残っています。
指先で身をなぞると、中心部分よりちょっと背中寄りの位置に並ぶ小骨に気づくはず。魚の扱いに慣れている人なら「この魚はちょっと変な位置に血合い骨があるな?」と分かるでしょう。それが頭から尾に近い位置までずらり。しかも斜めの角度で身に食い込んでる。
血合い骨とは位置が異なる
海の魚、とりわけ青魚をさばくのに慣れている人こそつまづきやすいポイントです。
これはいわゆる血合い骨ではなく「上神経骨」と呼ばれるマス類を含む一部の魚に特有な小骨。例えば3枚におろした場合、ニジマスの身の中にこのような形で食い込んで残ります。
ニジマスの小骨は一括処理できない
例えばブリなど多くの魚にある血合い骨は背骨からほぼ直角に生えているため、その部分だけを無駄なくそぎ落とすことができます。しかしニジマスの上神経骨は斜めに食い込んでいるため、同じ方法で処理することができません。面倒ですが、指先で位置を確かめながら一本ずつ骨抜きで抜く必要があります。
骨抜きは100均の骨抜きでもまれに精度のいいものがあったりしますが、だいたいは挟む部分の噛み合わせが悪いので、調理器具メーカーのものをおすすめします。私はこれを使っています。
根気よく1本ずつ抜いていく
内臓が入っている範囲と同じ位置まで、つまり肛門の位置ぐらいまでずらっとこの骨が並んでいます。
面倒ですが、骨が生えている向きを確認してその方向に逆らわず引っ張れば抜けていくはずです。身が骨に引っ張られて多少はグズグズになると思いますが、そういうもんだと諦めましょう。
上神経骨についてはこちらで詳しく解説しています。
皮をひく
包丁で皮をひいていく
小骨が抜けたらもう一息。
大きなニジマスは皮が厚く硬いので皮付きのまま刺身で食べることはできません。回転ずしの炙りサーモンのように強めに炙れば食べられますが、基本は皮を引く必要があります。
皮を下にしてまな板に身を置き、尾から刃を入れていきます。身と皮の間の層に包丁の刃を入れると、刃が進むポイントがあるはずです。なるべく刃が薄い包丁を使えばやりやすいです。
包丁を動かすというより皮を引っ張りながら身をはがしていきます。最初は途中で皮が切れたりして難しいと思いますが、慣れだと思います。
両身とも皮がひけました。
皮下脂肪の層は美味しさの証
身が白っぽく見えている部分は、皮下脂肪的な部位。これが多ければ脂が乗ってる証拠です。養殖魚は栄養価の高いエサを食べているので脂がのっているのがデフォルト。
お腹付近の銀色も旨味のもとなので、これがうまく残せると美味しいし、見た目的にも華やかになります。
切り分けて盛り付ける
刃の長い包丁で食べやすい大きさに切るだけ
さあ、面倒で難しい作業はもう終わりました。小骨も残っていないはずです。あとは食べやすい大きさ、好みの大きさに切り分けていくだけ。
なるべく身の細胞をつぶさないよう、包丁の刃全体を使ってスーッ引くように切っていくのがコツ。そのために刃が長い刺身包丁があればベストです。
三徳包丁でもいいので、できるだけ刃渡りが長いものを使いましょう。
いずれにせよ砥石で研いで切れ味は確保しておきたいところ。切り方ぐらいで違いが出るのかと思いますが、押しつぶすように切ったグズグズの刺身と丁寧に刃を引いて切った断面がきれいな刺身とでは明らかに味の差がでます。
好きに盛り付けて召し上がれ!
切れたらお皿に盛り付けて完成。
私は盛り付けの技術やセンスがないので、とりあえずこんな感じということでお茶を濁したいと思います。家で食べる分には美味しく食べられりゃいいんです。
ではわさび醤油でお召し上がりください。
上の写真、身の上の方にある白い脂肪の層が見えるでしょうか?脂がのっている証拠です。赤身のニジマスならたいていこのようになっています。
味は食べなれたあのサーモンの味…なんですが、アトランティックサーモンと比べて脂がのりすぎてくどいこともなく、老若男女誰もが率直に美味しいと感じる味のはず。血抜きなどをしてその日のうちに下処する、しっかり水分を除去するということに気をつければ、生臭さも気になりません。
大型ニジマスが釣れたら試してみよう
全国的にご当地サーモンブームが訪れており、そのほとんどは大型のニジマスを養殖したものです。
そういったご当地ニジマスが放流されている管理釣り場もあり、それを目当てに竿を出して見るのもいいでしょう。食材という目で見れば、小型のマスを10匹釣るより大型マスを釣る方が価値があるといえるかもしれません。
この記事内でも解説した小骨さえクリアできればきっと美味しいお刺身が作れるはずです。